The Best Exotic Marigold Hotel(マリーゴールド・ホテルで会いましょう)2012/10/23 13:53

今年の夏海外出張したら飛行機の中でこの英国映画を上映していた。この映画は東京国際映画祭招待作品となっており、邦題「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」として来春何と英国公開に遅れること約1年(!)で公開予定だ。ネタバレを承知で映画の内容を紹介するとこんな感じになる。

7人の英国人男女の高齢者が引退後の生活を送るためインドにやってくる。3人(未亡人と夫婦一組)は英国で老後の生活を維持するだけの所得がないために、1人(女性)は英国の国民健康保険では迅速な腰の手術が期待できないために、2人(男女)は老いらくのアバンチュールを求めて、そして1人(引退した判事で男性)は自分が幼少のみぎりに住んでいたインドで自分の初恋の相手(男性)の残影を求めて。

飛行機がデリー空港に延着し乗り継ぎ便を逃したため、一行はバスで滞在先Best Exotic
Marigold Hotel(素晴らしくエギゾチックなマリーゴールド・ホテルほどの意味)のあるジャイプールに向かう。英国で見たパンフレットとは裏腹に、ホテルはそこかしこに修繕が必要なオンボロだが、有り金をはたいてやってきた仲間もいる一行は移るわけにもゆかずホテルに滞在することになる。

所得不足の3人のうち未亡人の女性と、夫婦のうち夫の方はインドに対する興味津々で、最初は老判事の手引きで、そのうち自分たちだけであちこちへ出歩くようになる。そのうち未亡人の女性はコールセンターで英国人相手の電話の受答えの講師という定職を得る。

イギリスの病院で白人の医師の診療を受けたいといって大騒ぎしていた、腰の手術にやってきた老婦人は、インドの病院のレベルに半信半疑だったが術後の経過が良好であったので少しずつではあるが着実にインドになじんで行く。

初恋の男性との再会を果たした老判事は、相手が結婚しそれなりに幸せな日々を送っていることを知り安心し、ある日眠るように他界し、初恋の男性の手で荼毘に付される。

老いらくのアバンチュールを求めてやってきた男性も精魂使いはたして他界する。やがて所得不足の夫婦の妻は夫とコールセンターに勤めだした未亡人の関係を疑い、インドにもなじめずイギリスに帰国する。残った4人はそれぞれインドに自分たちの居場所を見つける。

外国人医師によって維持され、それでもコスト節減が追い付かず外国の病院に手術を外注する英国の国民健康保険の現状とか、インドに着けばついたで一行が乗るバスがエアコン付きでないバスだとか、地元の社交クラブに会員登録するとき自分たちの経歴を英国の王族だと言って詐称するとか、ホテルの支配人の若い男性が客の期待に応えようと心はこもっているがいささかトンチンカンなサービスに精を出す様とか、その支配人の兄がホテルを引き倒してビルを建設しようと母親を焚きつけているとか、細かい道具立てにインドを良く知る英国人の作った映画ならではの配慮が光る。

その道具立てを使って浮き彫りにされるのは、英国の国民健康保険制度の問題のみならず、英国も老人たちが自分の落ち着く先を求めていろいろ試行錯誤している姿だろう。そして現地社会に自分の足がかりを見つけうまく溶け込んだ人に未来があるように見えるところで映画が終わっているところが考えさせられる。

時間を数年後に設定してこの映画の後篇を作ったらどうなるのだろう?主人公たちは更に年をとり、体力も衰えているだろう。インド人は大家族制度のもとで皆が助け合って生きることで社会福祉の不足を補っている。裕福な大家族の係累であればよいが、裕福ではない大家族の場合結構シンドイことになる。そういうとき、インドにとりたてて係累のいない、イギリスから送金されてくる年金が頼りの4人のイギリス人はどうなるのだろう?新しい人間関係を結んでうまくやって行くのだろうか?結局インドになじめずイギリスに帰った女性の方がイギリスの福祉制度の恩恵にあずかって一見幸せな老後を送るのだろうか?年をとっても新しい人間関係を絶えず築いて行くのは結構シンドイなぁ。イギリス映画を見ているといつも同じベテラン俳優が危なげなく演技をしていて、次の世代が育っているのか心配になるなぁ。

そんなことを思いながら明かりを落として暗い機内で映画が終わってからの余韻を楽しんでいた。

コメント

_ MT ― 2013/02/11 17:38

面白そうですね。今度見てみます。

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