イスラム国による日本人人質処刑予告 追記2015/01/31 07:19

昨日日本における中東情勢に関するオーソリティーの一人の酒井啓子千葉大学教授の「激動する中東情勢: イスラーム国がもたらす危機」と題する講演を聞きに行った。このブログで「イスラム国による日本人人質処刑予告」を取り上げたばかりなので「何か参考になることでも…」と思って出席したわけだが「イスラム国について学生向けに『理想の国を建設しようというサークル活動が肥大したようなもの』という説明を使っている」という話以外は特に目新しい話はなかった。むしろ「現在のトルコではきちんと政教分離ができている」との発言をきいて「トルコにおけるイスラム教勢力の復権を過小評価しているのではないか」との懸念を持った。「現在の中東情勢は複雑な要因がからみあっていて簡単な解がない」という講演の結論は私が「イスラム国による日本人人実処刑予告」で書いたものと同じものだ。

また酒井はアルカイダとイスラム国を分ける特性として「アルカイダは自分の目的達成のために国外で戦うことも辞さないのに対しイスラム国は理想郷の建設を目指して版図を拡大しているので飛び地のようなところでは戦わない」という説明を行っていたが、これほどきれいな分けかたは出来ないと思う。私はむしろ

* 「パリのテロはアルカイダ系の仕業」と酒井が言ったテロ犯の一人がイスラム国の旗を背
   景にして撮った写真があることからも明らかなように、アルカイダとイスラム国は重複して
      いる部分があり、きれいには分けられない

* 急進的な思想を持つ団体のアナロジーを使えば「彼らは今後組織の拡大ができないと内 
   部の思想対立が表面化し、分裂を繰り返すことになる」

と考えている。

この認識を使えば「彼らに抗するのは、月並なようだが『分裂を誘発するよう彼らの拡大を抑えこみ、分裂した部分を個別につぶしてゆく』しなかない」と思う。ただ彼らの活動する地域の広大さや、彼らと対峙する関係国の利害の複雑さや、彼らの活動に対する多くの地域住民の心情的な共感、といった要素がからみあって、一貫した封じ込め政策をとるのが困難なことにこそ、現在の中東情勢の解の難しさがある。


水のなるほどクイズ2010