量的金融緩和論の終り ― 2016/12/15 13:09
日米株価を考える--日本経済新聞ってホントただの業界新聞 ― 2016/11/17 17:24

つかないほどの差は、株式や投信などの運用益の違いによって主にもたらされた。



ドナルド・トランプ大統領になったら ― 2016/05/11 12:03
あらゆる大統領候補が大統領になってから、議会や官僚機構とのやり取りの過程で選挙戦中の発言内容を多かれ少なかれ修正する形で政策を策定し実施することになる。トランプの場合、そもそも彼の共和党内での支持基盤が無いに等しい状況だから、いくら共和党が議会の多数派を握っているからといって、政策の策定の過程では様々な妥協をすることになるのは確実だ。ただそうではあっても彼は一国の元首だ。ビジネスマンとしての彼のこれまでのキャリアや共和党大統領選を勝ち抜いてきた過程からいって、世論を自分の側につけ強引に議会や官僚機構を自分の考えに従属させるということをするような場面も出てくるだろう。
国内向けの政策はこんなものだろうが、議会との調整をそれほど必要としない外交政策ではアメリカと向き合う国々はトランプとストレートな形で対峙することになることを覚悟しなくてはならない。
トランプが大統領として何を他の国に行ってくるのかは「これまでのアメリカのやり方よりははるかに自国の利益にかたよった要求を突きつけてくる」という一般論以外は予測不能だ。ただひとつ確実に見通せるのは彼の交渉スタイルだ。
ビジネスマンとしての彼の事業モデルは少々の手金と限界いっぱいの借金をあわせ、大規模な不動産事業を展開するというものだ。資金提供者に対しては「家賃が平方フィート$4.70(坪約17,000円)のマンションでも、Trumpブランドをつければその1.5倍以上で貸せる」といった話を、持ち前の交渉力で押し通してカネを出させる。
トランプは自分の進めたプロジェクトが当初の目論見ほどの収益が上げられず、資金が回らなくなって債権者から様々な要求をつきつけられた経験を何度もしている。その都度トランプは事業の一部を売却したり、債権者から債務の軽減を勝ち取ったりすることで切り抜けている。債務軽減の際の手口は「俺がつぶれたらお前たちの財務諸表に相当の穴があくのはわかっているな」という債権者に対する脅迫と「俺がやっていればなんとか返済を継続できるから」という強弁だ。
景気の悪化局面では不動産デベロッパーと融資団との間では絶えずこのような緊張関係があるが、通常この種の話し合いは表立っては行われない。トランプの場合は「密室での協議よりも効果がある」と見れば、必要に応じて大声で「債権者の言うとおりにすれば、この美しい町並みがスラム化する」といったことを口にしたりして、テナントや近隣住民の自己保全意識を喚起して債権者に揺さぶりをかける事だろう。
彼の事業は絶えず過大な借金を抱えながら拡大してきたから、積み上がった借金を債権者に対する脅迫のネタにすることができる。往々にして債権者側がシンジケートを組んでいて足並みが揃わないとか、自分達の体面を保つことを重視するとか言った状況を「俺は失うものは何もない一匹狼だ」という立場を取る彼が逆手に取るわけだ。
これを例えば日本との外交交渉に当てはめてみよう。結論がある程度見えているだけ気が滅入る話しなのだが…
トランプがよく口にする「同盟国は米軍駐留経費を負担しろ」という議論。こちらが最終的に「そんなに言うならいつでも出て行ってもらっても良い」といいきる覚悟があれば彼とイーブンな交渉は成り立つ。しかし現実の日本側は様々な「弱み」を抱えていて到底トランプの脅しに対峙できる状態ではないと思われる。
先ず第一が、日本の国民が「自国の防衛をどうするのか」という点で「自分の国は自分の軍隊で守る」というところまで覚悟ができていない点だ。
「自分の軍隊だけで守るのはシンドイからアメリカ軍の力も借りる」というのが大方の日本人の考えだと思うが、そうであれば「自分の国は自分の軍隊だけで守る」コストとの比較で「どこまでアメリカ軍のコスト負担をしていれば計算があうのか」という分析を行ったうえでトランプと対峙しなければならない。しかしそのような計算が行われているのかどうか不明だ。「実は計算はあります」ということであっても、後述するようにどれだけしっかりした計算ができているのか甚だ疑問だし、政府がそのアヤフヤな計算結果すらそれをキチンと国民に対して提示してきたことはない。従い国民の方でも覚悟のしようがない。それに加えて、考えつくだけで:
※ 米軍駐留にかかる本当のコストは恐らく原子力発電の本当のコスト同様、政府自体が正確にこれを把握できないのではないか
※ 核持ち込みに関する密約問題が未だにウヤムヤにされている(これを掘り起こすと過去の自民党政権が行ってきた説明がすべて崩壊し、自民党にとって大ダメージになるからできない)
と言ったトランプにつけ入られる弱みがある。
私は隣に日本より遥かに経済規模の大きな中国のような国が存在している状況下で「自分の国は自分の軍隊で守る」という考えは危険だと思う。国の負担能力を越える軍備が経済を疲弊させ、国策を誤らせることは日本人が自分の近代史を通じて認識してきているはずだ。「世界最大の軍事大国アメリカが日本の後ろにいる」と中国が思っているおかげで、日本の軍事予算は無理な膨張をしないですんでいるのは事実だとの認識は必要だ。この部分は大方の日本人の皮膚感覚と同感だ。
一方アメリカ側も日本に基地をおくことでそれなりのメリットを享受していることもまた事実だ。
このアメリカ依存のコストとアメリカ側のメリットを正確に認識することがトランプ大統領と対峙するまでに済ませておく必要のある日本の政府と国民に課せられた宿題だが、果たしてそのようなことになるのだろうか?
頭が整理されていない混乱をトランプ大統領に読み取られ、その弱みにつけいられて過大なコスト負担を負わされることはぜひ避けたいところなのだが…
日本人は社会科学的構想力がもてるのか? ― 2016/04/21 02:08
このブログの東日本大震災に伴う福島第一原発の事故に関するエントリーで、我々
日本人が冷静に大局を分析しそれに基づく行動をつくり上げる論理的な構想力に
欠けるのではないか?つまるところ社会科学的構想力が欠如しているのではない
か、という話を書いた。
その「社会科学的構想力のなさを説明する何か客観的な指標がないか」と思ってい
たが、たまたま経済学の分野における論文の数や影響力のある論文の数を測った国
際的な指標があることがわかったので、これを「日本の社会科学的思考のレベルが
世界ではどれくらいの位置にあるのかを示す指標」と乱暴を承知で読み替えてデー
タを示したい。
アメリカのセントルイス連銀経済調査部Research Division, Federal Reserve Bank
of St LouisがEDIRCとRePEcというデータベースをもとに世界中の経済学関連の
論文を集めたIDEASという名のデータベースを公開している。EDIRCはセントルイ
ス連銀経済調査部が管理・公開しているデータベースだが、RePEcは現在87カ国が
参加するネット上のデータベースだ。IDEASのサイト上にこのデータを分析して、
発表された学術論文の影響力で測った2016年3月現在の世界の経済学部上位25%
のランキングTop 25% Economics Departments, as of March 2016が発表されてい
る。上位25%だけで261の大学・研究所が登場する。
トップは「さもありなん」という感じでアメリカの Department of Economics,
Harvard Universityハーバード大学経済学科だが 10位までをリストアップする
と以下のようになる(国名を括弧内で示している大学・研究所以外はすべてアメリ
カ):
※ 以下便宜上departmentを学科、facultyを学部と訳しているが、例えばハーバ
ード大学経済学科は54名の教授 (professor)、助教授(assistant professor)、
専任講師 (senior lecturer)をかかえているので規模から言えば日本の感覚では完
全に学部だ。
2. プリンストン大学経済学科 Department of Economics, Princeton University
3. マサチューセッツ工科大学経済学科 Economics Department, MIT
4. カリフォルニア大学バークレー校経済学科 Department of Economics,
University of California - Berkeley
5. オックスフォード大学経済学科(イギリス) Department of Economics,
University of Oxford
6. シカゴ大学経済学科 Department of Economics, University of Chicago
7. パリ経済研究院(フランス) Paris School of Economics
8. スタンフォード大学経済学科 Department of Economics, Stanford University
9. ニューヨーク大学経済学科 Department of Economics, New York University
10. コロンビア大学経済学科 Department of Economics, Columbia University
パリ経済研究院(正式通用名が英語でロゴも英語の頭文字“PSE”)が7位に登場す
るのは「21世紀の資本」の著者トマ・ピケティThomas Pikettyの活躍に負うとこ
ろが大だと思われるが、フランスはツールーズ経済研究院 Toulouse School of
Economicsが12位に入るなど、結構現代の経済学研究のメッカのようだ。 40年以
上前に経済学部を卒業したものには意外感があったが、現役経済学者によれば現代
経済学におけるフランス勢の活躍は目覚ましいものがある由だ(知らなかったぁ)。
このリストでアジアの大学はシンガポール国立大学経済学科 Department of
Economics, National University of Singaporeが92位で登場、その次に登場する
アジアの大学が111位の東大経済学部だ。モスクワにある国立研究大学高等経済学
院Higher School of Economics, National Research Universityが64位と健闘し
ていることを考えると、上述の2011年3月のブログでとりあげた帝国陸軍の将官
たちの戦略思考の欠如を指摘したソ連の伝統はしっかり継続しているのかもしれない。
かつてシンガポールの外交官キショール・マハブバニ Kishore MahbubaniがCan
Asians Think? (2001年、アジア人は考えることができるのか?の意)という本を著
した理由が判る気がする。尚Can Asians Think?はどういうわけか邦訳が存在しない
が、それは何故だろう?
補足すると、世界の経済学部上位25%のランキングに登場する他のアジアの大学は:
138位 シンガポール経営大学経済学部 School of Economics, Singapore
Management University
139位 高麗大学校政経学部経済学科
141位 清華大学経済管理学院
195位 ソウル国立大学経済学部
205位 慶応義塾大学経済学部
226位 一橋大学大学院経済研究科・経済学部
ということだ。かろうじて日本の大学が3校登場しているが、人口567万人の小国
シンガポールの大学が2校登場していることには注目しておいたほうが良いと思う。
A view of the VW scandal from a Japanese outpost? ― 2015/10/11 08:44
Shigeru Shoji is the ex CEO of VW Japan. Shoji was employed by
VW HQs in 2012 and was subsequently seconded to VW Japan as its
CEO. By all accounts he was very successful at growing VW’s
business in Japan, tirelessly visiting his distributors across Japan and
exhorting them to sell more. His work paid off and VW became the
absolute top seller within the Japanese imported car sector. Success
led to his becoming chairman of the Japan Automobile Importers’
Association in 2014. But he suddenly quit voluntarily in July 2015.
Since this was just after he had announced the new VW Passat’s
introduction to the Japanese market (the gasoline engine variety, not
the diesel), speculations were rife -- the link provided is a typical one –
that Shoji was forced out because of differences with VW HQs over
marketing policies and results.
Prior to heading VW Japan, Shoji built his career as an employee of
general trading company (a sogo shosha in Japanese parlance) Itochu
Corporation’s automotive business. This would mean that he spent
his career exporting Japanese cars and car components to markets
where car manufacturers did not wish to tread directly, finding and/or
becoming those cars’ local distributors, on occasion financing local car
sales, and also on occasion setting up car assembling plants. He
apparently was extremely successful at that, and according to
Japanese website Business Journal eventually made friends with
Ferdinand Piech’s son, who recommended him to VW as a potential
head of VW Japan. Ferdinand Piech is of course the ex VW
Supervisory Board chairman who lost his position this year in a palace
coup.
It might appear that the speculations surrounding Shoji’s abrupt
departure from VW Japan were off the mark.
In an October 7 article in Japanese economic paper Nikkei’s online
edition, Shoji’s ex boss Uichiro Niwa, who was CEO of Itochu between
1998 – 2004 wrote that “various information are coming out of the[German car] company. If such amounts of information could well out,
it would not be strange that information and rumors regarding the fraud
were widespread within the company. After all in any company, there
are communications at various levels that circulate among top
management and its workers. Is it possible that top management was
oblivious to all this?”
Although I would not allege that Niwa is not Internet savvy, I am not too
sure whether he had the ability to trawl through the Internet in German
in search of leaks on the VW scandal.
If I am speculating correctly, Japan might have lost an opportunity to
trumpet the strength of, and commitment to its whistleblowing system.
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