神輿に乗る人かつぐ人--浜田宏一と本田悦朗の話を聞いて2014/12/05 19:30

最近アベノミクスの理論的支柱とされる浜田宏一米イェール大学名誉教授と本田悦朗静岡県立大教授(両名とも現在は内閣官房参与)の話を聞く機会を持った。
 
浜田とは一度ニューヨーク行の飛行機に同乗したことがあるが、写真で見る通りの一見好々爺だ。全日空の機上でバースデーケーキが供されたことをうれしそうに語っていたことと、同行していた東京大学経済学部教授の伊藤元重がなんとなくヨソヨソしくしているようにみえたのが印象的だった。

話を聞いていると最近の名詞についてウロ覚えというか誤りが多く、民主党のことを民社党といってみたりする(このようなウロ覚えの例は他のブログにも指摘があるので結構ひんぱんに起こるものだろう)。英語も相当なトツ弁で「これでイェールでTenure[脚注※]がとれたのなら相当な学術上の貢献があったのだろう」と考えるしかない。ちなみに私のブログに登場する故森嶋通夫 英LSE教授の講義の場面をテレビで見たことがあるが、森嶋のほうがはるかに英語は能弁だった。

浜田は「アベノミクスが中断されればデフレギャップがまた発生して万年不況に逆戻りする。だから日本国民は自民党を支持しなければならない」「アベノミクスが中断してもインフレにはならない」「最近デフレギャップが開いたのは財務省の差金で消費税を8%にあげたせいだ」とこの部分見解にはブレがなかった。

ブレがあったのは、かつて安倍晋三首相の姓のローマ字表記ABEにひっかけて「アベノミクスの評価は第一の矢はA、第二の矢はB、第三の矢はE」といったとされている部分についてだ。ちなみにアメリカの学校の評価は一般的にAが優、Bが良、Cが可、Dが否で、完全に手がつけられないレベルがFで、Eというのは通常使われない。これはEがExcellent(秀逸)の頭文字だからだと思う。ただし浜田が「第三の矢はE評価」といったのは「否以下の不合格」の意味だったはずだ。この部分について尋ねられると「第三の矢は官僚機構を始めいろいろな抵抗勢力があるのでなかなか一朝一夕では進まない」と「E評価だ」と断罪した威勢の良さはなかった。

この構造改革関連で浜田はimmigration、つまりは移民の導入が必要だとイの一番に主張した。ただ、別なところで話を聞いた本田悦朗は移民の導入には極めて慎重姿勢だ。本田は神風特攻隊のことを語ると涙するような人物だから移民が入ってくると国体が護持できないとでも考えているのだろう。移民に関する本田との見解の相違を質されると、浜田は「色々な考え方があるから」とお茶を濁した。この爺さん結構狸じゃん。

本田の話は簡単明瞭、その上それなりに理路整然としていてわかりやすい。本田の思想的な方向性ともあいまって、別荘がご近所の安倍がコロリと説得されたのはさもありなんだ。

本田が今回の消費税増税延期実現のためどのように動いたかについては12月3日付日経新聞電子版に掲載された「再増税延期、そのとき舞台が動いた」と題する滝田洋一編集委員の署名入り記事からも明らかだ。浜田のボケぶりや、伝えられるクルーグマン米コロンビア大学教授動員などを見ていると、アベノミクスの本丸というか神輿を担ぐ人は本田で、浜田やクルーグマンは神輿に乗る人だという図式が見えてくるようだ。

今回の衆議院選挙は議席を多少減らすことがあっても自民党の勝利となろう。これは安倍政権への信任というよりは自民党に対する野党があまりにも分裂しているからだ。とすると本田が引き続き内閣官房参与として経済政策に大きな影響を駆使することになろう。本田の動きには今後共注意が必要だ。 日経の滝田編集委員には今後共内幕紹介をお願いしたいところだ。

※ Tenureとは教授職が保証される状態のこと。アメリカの大学ではtenureがとれないと定期的に雇用契約見直しの対象となり、教授職に留まれないケースも出てくる。


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