アベノミクス2013/04/27 00:33

アベノミクスやその成果については私がちょっと見ただけで大前研一小峰隆夫野口悠紀雄藤巻健史 (50音順)と言った人々がその成果を疑問視したりその行く末に危ういものを感じているような論説を発表している。しかしその一方で株が上がったり賃金が上がりそうだったりするので「成果が出てるじゃないか」という声が日増しに大きくなってきているような印象を受ける(とりあえずは「日経新聞を読むとそんな感じがしてくる」という但し書きをつけておこう)。こうなるとこれまでの日本ではKYとか言って、懐疑論を語ることがはばかられるようになってくる。

しかし冷静に考えてみれば、金融緩和にしても、財政出動にしても過去の自民党政権下でも、それに続く民主党政権下でもあれこれ試されていて、それが何でアベノミクスというレッテルがつくと経済が上向くのだろう?

一つ知っておくべきことは経済政策は自動車の運転のようにキチンと加減速ができるものではないということだ。経済学はまだ到底科学の粋に到達していない。こんな状況下では経済政策には結構「目をつぶってエイヤッ」と言う部分がある。ちなみにアベノミクス第一弾の大幅金融緩和は表面上はそれなりの理論的根拠があり、周到な計算に基づくもののような説明になっているが、4/23の日経朝刊の記事をみると黒田新総裁が通貨供給量を「わかりにくいから」といって

1.8倍から2倍に引き上げていることがわかる。エラそうに金融政策といってもこの程度のものなのだ。


そんな状態だから、今回の金融緩和が行き過ぎてインフレ暴走となり始めたらキッチリ制御できるのか疑問に思っておいたほうが良い。これはとくに現役年金生活者及びその予備軍たる我々が真剣に考えておくべき疑問です(∵ 年金はインフレに遅れて支給額が是正されるし、政府が財政難になればナンノカンノといって支給額の是正や支給そのものを遅らせたりする)。

そんな疑問をもつなか、安倍首相のブレーンで元大蔵官僚の高橋洋一が月刊誌 Facta 4月号に寄稿した「『インフレ目標』わが23年戦記」という文と、「今の経済情勢では金融政策では経済が好転しない」と断じる野村総研のリチャード・クーの文を読んだ。クーの文の方は野村証券の顧客向けウェブサイトの中のマンデー・ミーティング・メモという不定期のレポートの4月15日版だ。高橋は「通貨供給量を増やせばインフレが起こって経済が成長する」と安部首相に吹込んだ当の人物だ。クーは「民間がバブルのせいで傷んだバランスシートの修復をしている間は、金融政策で銀行にいくら資金を供給しても、だれも銀行から借金をしてくれないので、金融政策は無意味だ」という欧米でも有名なバランスシート不況論を言い出した人物だ(個人的にはバランスシート不況という現象に気づいたクーは安倍のブレーンの浜田宏一よりよほどノーベル経済学賞に値すると思うが、学者は民間エコノミストを評価しませんからねぇ)。

政治家は、特に日本の政治家は、理論に弱く情緒に流されがちだ。まあ存命の戦後の政治家でこれがあてはまらないのは中曽根康弘くらいなものだろう。「安倍首相はクーのバランスシート不況論も理解・検討した上で確たる根拠を持ってインフレターゲット論に同調しているのだろうか?」とフト気になった。


会社の元同僚で「成蹊中高で安部兄弟をシゴイテいた」という男によると「安部なんて頭が悪くてドーしようもなかった」そうだ(秀才のほまれ高かった中曽根康弘やそのライバル福田赳夫とは大分違う)。そんなことを聞くにつれアベノミクスの根拠がどれくらい吟味されたものなのか極めて危ういものを感じてしまう。

前述の藤巻健史はこれまで自分が債券や為替で張っている内容にそった(つまりは彼個人の相場観に沿った)発言をしている。彼は数年前から一貫して「円が弱くなるはずだ」或いは「安くなるべきだ」と主張しているので、昨年までの円高局面ではかなり損を出していて、ここ数ヶ月でその損を取り戻しているのではないかと思われる。しかしその藤巻の「日本経済の先行きは暗いので円を売って外貨(ドル)を買え」という主張に、なんとなく彼の思惑に対する疑念よりも共感が先立つ今日このごろだ。


水のなるほどクイズ2010