イスラム国による日本人人質処刑予告2015/01/24 08:30

今回の「イスラム国」による日本人人質処刑予告。イスラム国には「人質の在庫」がある。彼らは自分たちの主張をしたいテーマがあるとき、そのネタとしてその在庫を引っ張りだして処刑してみせたりする。昨年から持っていた日本人人質の在庫が安倍首相の中東歴訪に合わせ「日本をゆするにはちょうどよいタイミングだ」としてイスラム国に使われた。当事者にとっては過酷な話だが、このニュースはそのように見るべきだ。

それにしても今回の安部首相の中東歴訪にイスラエルが加えられたのは彼の外交政策アドバイザー達の大失策だ。首相のアドバイザー達がどこまでイスラム国の「日本人人質在庫」のことを認識していたかは知らないが、今回のイスラエル訪問は恐らく彼らアドバイザー連が「中東でアラブ・イスラエルの仲介者としての地歩を固め、石油・天然ガス輸入でアラブ諸国に依存する我が国のプレゼンスを高めるため」とか言った空疎な言葉で巧みに話を持ち上げ、首相が「ウンそうだ、そうしよう」とそれに乗った、というあたりだと推察する。「イスラエル訪問がなければ『日本人人質の在庫処分』はなかったろう」とは言わないが、彼らアドバイザー達は「首相のイスラエル訪問で『在庫処分リスク』が一気に高まった」ことへの責は問われるべきだろう。

中東の現状形成に何らかの直接的な責任があるアメリカや英仏とは違って、そのようなしがらみがないのは日本」だからといって「日本がアラブ・イスラエルの仲介者になれる」と考えるのは短絡にすぎる。アラブ・イスラエルの関係というのは同じセム語系部族間の数千年続いているライバル争いだ。そんな数千年も続く争いから遠く離れた極東の小国日本ができるのはよくて「交渉の場を提供する」くらいだ。

日本がすべきことは石油・天然ガス輸入を通じて安定的なお客様として産油国との友好関係を保ちつづけることだ。そして複雑な利害がからまるアラブ・イスラエル関係については「イスラエルのパレスチナ占拠が不当であると考えるが、パレスチナ側もイスラエルに無差別でミサイルを撃ち込むようなことは慎むべきだ。問題解決にあたっては当事者間の平和的な解決を希求する」とのポジションをとり続けることだ。ちなみにこれはほとんどの中東諸国が表向きとっている方針だ。第一次石油ショックの時のように日本のエネルギー輸入に影響があるときは日和見だと言われようが積極的に「アブラ寄り」の政策をとればよい。

田中宇というジャーナリストが世界の情勢分析に関するメルマガを出している。有償メルマガだが時々無償で記事を配信してくる。「こういう見方もできるのね」というキワモノとしての価値があるので、私は無償版のリストに登録している。その彼が「安倍首相が、おそらく米国のタカ派政治家から頼まれ、経済関係を強化すると言ってイスラエルを訪問した」とのコメントをしているが、「消費税増税黙認で借りのあるアメリカへの配慮」とでも言い換えてくれれば結構重みのある分析だったと思う。

水のなるほどクイズ2010