渋滞のおかげで命拾いした2014/12/01 19:36

この夏、東京で急用があってウィークエンドの夕刻東名高速道路の上り線の追越車線を走行していた。案の定大井松田のあたりからノロノロ運転になった。30キロ90分とか電光掲示板に出ている。ヤレヤレ。トロトロと秦野中井を過ぎ、伊勢原のバス停あたりまでやってきた。と、車のギアの挙動がおかしくなり始めた。

私の車はトヨタのMR-Sというオープントップの2シーターのスポーツカーだ。軽量、ミッドシップエンジン。クラッチを踏まずにギアチェンジできる機構をシーケンシャルギアと定義すれば、国産の乗用車では唯一のシーケンシャルギア仕様のクルマだ。だからノロノロ運転の時は基本的に、1→2→3とか3→2とかいう操作を多用することになる。ギアは超ノロノロになると自動的に1にシフトダウンするよう設定してあるのでこういうことになる。

ところが1→2とシフトすると勝手に2→3とギアが進んだり、3→2とギアが落ちたりるようになった。???。

車列が完全に停止したところでエンジンを切って再起動する。ギアをニュートラルにしないとエンジンを掛けられないが、ギアが勝手にバックに入ってしまう。それをニュートラルに戻してエンジンを掛け、N→1にするとギアが勝手にシフアップし始め車が全く動かない。これは駄目だ。

フラッシャーを点滅させ、フレアを持って社外に出て迷惑をかける後続の車に挨拶をする。そして110番に電話をかける。携帯の記録では8/3 17時36分。時々高速道路で見る故障渋滞を「迷惑だなぁ」と思いながらひとごとのように見ていたが、まさか自分が…

「フレアをたき、衝突防止のための三角板をたて、車道から退避して下さい。すぐパトカーと道路会社の黄色いパトカーがそちらに向かいます。到着したら指示に従って下さい」

車は追越車線でエンコしている。客観的に見て道路は完全に渋滞し、周辺の車のスピードは早い歩行くらい。身の危険は感じられないのでそのまま現場に立って追越車線に入ってくる車を他の車線に誘導する。

渋滞中のため15分以上たってパトカーのサイレンが聞こえパトカーが到着。一方のおまわりさんがパトカーを使って車の流れをせき止めている間に、もう一人のおまわりさんに車を押してもらい車を路肩に移動させた。程なくしてNexcoの黄色いジープが到着。パトカーは私の個人情報を書き留めて現場を離脱。

「JAFに入ってますか?」「入ってません」「じゃあ自動車保険は?ロードサービスがあるはずです」幸いにして私の自動車保険にはロードサービス特約が自動的に付保されていた。保険会社にレッカー車の手配を依頼する。

任意保険を付保する際はロードサービス特約もきちんと付保しましょう。

「我々はレッカー車が来るまでここにいますので」とNEXCOの救助隊員がいってくれる。

路肩に移動してからグロヴボックスの中からマニュアルを引っ張りだしてみる。変速がおかしくなり始めた時に点灯した歯車の輪の中に「i」がでるワーニングライトが気になったからだ。読んで見るとこのワーニングライト、トランスミッションの電子系統に問題が発生した時に発生するものらしい。基板の交換かぁ。

結局レッカー車が到着したのは20時過ぎ。当日東名はあちこちで事故やら故障やらがあったため、レッカーがなかなか見つからず、やっと見つかったレッカーも厚木で東名下りに乗って秦野中井まで行き、そこから渋滞をかきわけかきわけ伊勢原バス停まで引き返してきたとのこと。仕事とはいえご苦労さまです。

修理工場に車をおいてレッカーのお兄さんに最寄りの相模線門沢橋駅まで送ってもらい、そこから帰宅した。

しかしあの故障、渋滞中でよかった。高速走行中にギアがおかしくなって、エンジンの力が車に伝わらなくなってたらヘタして高速で追突され私が重度の負傷をしていたかも。

さて、翌朝適宜チェックしている国沢光宏のブログ読むとなんと「ヘタクソ増えて渋滞に苦しむ」というエントリーがある。「下は20時20分時点での状況。黒っぽい表示になってるの、事故か故障車です。下から大磯は追突事故。左下の東名は故障車」とあるじゃないですか。その「左下の東名」とは私のことです。

題名に惑わされず国沢の言いたいことを拾ってゆけば、彼が前から主張している車の自動安全機能の重要性を説いていることがわかる。これは

  しかし! 私の場合、[Volvo]V40だったら渋滞に突っ込む。やっぱし全車速アダプティブクル
  コンは超便利。ノロノロ走行があまり苦にならない。TVでも見ながら、いや、聞きながら走って
  いれば案外ガマン出来ちゃう。これでハンドル制御まで付いたらオニカナでしょう。

  ということで、もしクルマを買い換えるなら自動ブレーキ付き(基本的に全車速クルコンが付く)
  をすすめておく。渋滞がそれほどイヤじゃなくなります。

という結びの段落で明らかだ。かく言う私も今度車を買い換えるときは運行安全装備が充実している車にしようと思っている。

後日引退したトヨタのエンジニア氏にこの夏の顛末を話していたら、彼は一言「基板が過熱して不調になったな」と。

電子制御の場合今回の私のケースのように回路がダメになったら一発でオシマイだ。回路の二重化とかいった安全対策が必須だ。MR-Sの変速制御はそうなってなかったけれど。メーカーには私のような経験がおこらないようゼヒこの点お願いしたい。

神輿に乗る人かつぐ人--浜田宏一と本田悦朗の話を聞いて2014/12/05 19:30

最近アベノミクスの理論的支柱とされる浜田宏一米イェール大学名誉教授と本田悦朗静岡県立大教授(両名とも現在は内閣官房参与)の話を聞く機会を持った。
 
浜田とは一度ニューヨーク行の飛行機に同乗したことがあるが、写真で見る通りの一見好々爺だ。全日空の機上でバースデーケーキが供されたことをうれしそうに語っていたことと、同行していた東京大学経済学部教授の伊藤元重がなんとなくヨソヨソしくしているようにみえたのが印象的だった。

話を聞いていると最近の名詞についてウロ覚えというか誤りが多く、民主党のことを民社党といってみたりする(このようなウロ覚えの例は他のブログにも指摘があるので結構ひんぱんに起こるものだろう)。英語も相当なトツ弁で「これでイェールでTenure[脚注※]がとれたのなら相当な学術上の貢献があったのだろう」と考えるしかない。ちなみに私のブログに登場する故森嶋通夫 英LSE教授の講義の場面をテレビで見たことがあるが、森嶋のほうがはるかに英語は能弁だった。

浜田は「アベノミクスが中断されればデフレギャップがまた発生して万年不況に逆戻りする。だから日本国民は自民党を支持しなければならない」「アベノミクスが中断してもインフレにはならない」「最近デフレギャップが開いたのは財務省の差金で消費税を8%にあげたせいだ」とこの部分見解にはブレがなかった。

ブレがあったのは、かつて安倍晋三首相の姓のローマ字表記ABEにひっかけて「アベノミクスの評価は第一の矢はA、第二の矢はB、第三の矢はE」といったとされている部分についてだ。ちなみにアメリカの学校の評価は一般的にAが優、Bが良、Cが可、Dが否で、完全に手がつけられないレベルがFで、Eというのは通常使われない。これはEがExcellent(秀逸)の頭文字だからだと思う。ただし浜田が「第三の矢はE評価」といったのは「否以下の不合格」の意味だったはずだ。この部分について尋ねられると「第三の矢は官僚機構を始めいろいろな抵抗勢力があるのでなかなか一朝一夕では進まない」と「E評価だ」と断罪した威勢の良さはなかった。

この構造改革関連で浜田はimmigration、つまりは移民の導入が必要だとイの一番に主張した。ただ、別なところで話を聞いた本田悦朗は移民の導入には極めて慎重姿勢だ。本田は神風特攻隊のことを語ると涙するような人物だから移民が入ってくると国体が護持できないとでも考えているのだろう。移民に関する本田との見解の相違を質されると、浜田は「色々な考え方があるから」とお茶を濁した。この爺さん結構狸じゃん。

本田の話は簡単明瞭、その上それなりに理路整然としていてわかりやすい。本田の思想的な方向性ともあいまって、別荘がご近所の安倍がコロリと説得されたのはさもありなんだ。

本田が今回の消費税増税延期実現のためどのように動いたかについては12月3日付日経新聞電子版に掲載された「再増税延期、そのとき舞台が動いた」と題する滝田洋一編集委員の署名入り記事からも明らかだ。浜田のボケぶりや、伝えられるクルーグマン米コロンビア大学教授動員などを見ていると、アベノミクスの本丸というか神輿を担ぐ人は本田で、浜田やクルーグマンは神輿に乗る人だという図式が見えてくるようだ。

今回の衆議院選挙は議席を多少減らすことがあっても自民党の勝利となろう。これは安倍政権への信任というよりは自民党に対する野党があまりにも分裂しているからだ。とすると本田が引き続き内閣官房参与として経済政策に大きな影響を駆使することになろう。本田の動きには今後共注意が必要だ。 日経の滝田編集委員には今後共内幕紹介をお願いしたいところだ。

※ Tenureとは教授職が保証される状態のこと。アメリカの大学ではtenureがとれないと定期的に雇用契約見直しの対象となり、教授職に留まれないケースも出てくる。



水のなるほどクイズ2010