旭山動物園物語2009/02/22 22:17

この映画はあまり肩に力を入れず、「万年赤字が止まらないのでつぶされそうになっている動物園を、園長以下の職員総出で何とか建て直そうと必死に努力して建て直した」というスポ根ものストーリーの一種だと思ってみると非常にわかりやすい。これに動物と飼育係とのふれあいや園長以下の職員のやりとりがうまくまぶされているので楽しく見られる。

映画を見ていてハタと気づいたことは、登場人物の家族が全く登場しないことだ。それはそうだろう。映画の中の職員全員が動物オタクで寝食を忘れ自分の時間をすべて動物園につぎ込んでいるのだから。となると家族の登場する場所なんてない。登場人物が議論を戦わせているうちに喧嘩するシーンが結構出てくる。それもそうだろうイノチ動物園の人たちなのだから、と納得できる。家族の姿が現れるのは飼育係の吉田の母親だけだ。それも映画の最初の方と最後の方にスカートをはいた下半身と園長宛の手紙だけ。いよいよスポ根だ。

映画館の売店で主人公のモデルとなった実在の旭山動物園長である小菅正夫氏の「<旭山動物園>革命」(角川書店刊。この映画は角川映画)を購入して読んでみた。この本は映画の原案となった本だが、そこで小菅氏は「飼育係が一丸となってアイディアを出し合い、試行錯誤をした結果、今の旭山動物園ができあがった」と書き、そのためには「動物も人間も、『自分らしさ』を発揮できる環境はなにものにも替え難い」のだと書いている。その自分らしさを発揮できる環境をつくるため、会社用語で言えばQC活動をやり、職員の出すカイゼン提案をとりこんだ由。旭山動物園の今日はこのような職員一人一人の地道な活動を通じて編み出されたのものが実践された結果だという説明だ。確かに映画にあるように職員が動物オタクであることにも肯定的だ。しかし総じて言えば本の方は、いかにスタッフと動物の(そう動物の)モチベーションを高めて今日の旭山動物園ができたのかという軸にそって書かれた一種のマネージメント本だ。

たとえば旭山動物園の生態的展示と多くの動物園で行われている形態展示との違いを、職員と動物のモチベーションを高めて行くプロセスとからめてもっと掘り下げて描いて行くことができなかったのだろうか?おもしろい題材だけに、職員の情熱を熱く語る方に映画のフォーカスが行くあまりスポ根ものを脱却できなかったことが残念でならない。

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