Imagining India(インドを構想する)フォローアップ2009/11/12 00:48

Imagining India(インドを構想する) で
http://mumbaikar.asablo.jp/blog/2009/10/30/4662143

<Infosysの大株主として10億ドルを超える個人資産を持つニレカニがUIAI の長官職についたのは、国民総背番号化を通じてインドの行政のIT化や効率化推進のきっかけを作りたいとの意思の現われと見てよいだろう。彼には本の中で語りつくしていない壮大なITを使ったインドの行政の効率化のビジョンがあるはずだ。>

と書いたが、たまたま11/10付のWall Street Journal紙にニレカニがUIAI長官職についてから、いかにインドの官僚機構に足を取られているのかについての記事が出ていた(In New Role Nilekani Focuses on Politics, not Technology「ニレカニ、新しい仕事では技術ではなく政治に注力」)。記事によれば6月にUIAI長官に着任してから、ニレカニはもっぱらプロジェクトの重要性を説明するため関係省庁や地方自治体をまわっている由だ。

インド国内では早くもプロジェクトのコスト、実施可能性、データ保護などについての議論が起きているとのことで、ニレカニはこのようなさまざまな障害を乗り越えて国民総背番号制を根付かせてゆかねばならない。事務所の設立や職員の採用もビジネスのようにはテキパキ進まず、当人はThe cholesterol in the system for these types of decisions is much higher(このような決断をするに際しての組織内のコレステロールはかなり高い)とぼやいているようだ。

アメリカ人と交渉するとき2009/11/12 23:55

先日二人の民主党員の女性と会食した

先日二人の民主党員の女性と会食した。民主党と言ってもアメリカの民主党The

Democratic Partyの方だ。片方は普段はワシントンで女性運動のNPOを主宰している中学

校時代のクラスメートで、「今回の来日の際、アポイント取得等であれこれお世話になってい

るので食事でも」と言う彼女の誘いにのったものだ。

 

お互いの家族のことなど身辺雑事の話をしていたが、そのうち昨年のアメリカの大統領選挙

に話が向かった。私が仕向けたのではなく、ワシントンから来日した方が大統領選当時熱心

なヒラリー・クリントン上院議員(現国務長官)支持者として活動をしていて(と言うことがわか

った)、いかにヒラリーが政治家としてオバマに比べ勝っていたかと言う話をし始め、もう一方

の民主党員が「自分はオバマ支持であった」というと、ワシントンから来日した方が「それは

女性に対する裏切りだ、女性は団結してヒラリーに投票すべきだったのに…これで当面アメ

リカに女性大統領が生まれる芽はなくなった」と言い始めたのがきっかけだ。いわれた方も

それなりの理由があってオバマを支持していたわけだからアレコレ反論する。

 

延々と同じ趣旨の議論をしているので、アメリカンフットボールで監督がタイムアウトのときに

示す手信号(両手を丁字型に交差させる)を数回出したが、いっこう昨年の大統領選挙から

話が移らない。

 

もうヒラリーの敗戦談をきかされるのは結構。「要するに選挙のシステムに対応する選挙戦

をうまく組み立てられたオバマが勝ったということではないか?That’s politics isn’t it(それ

が政治というものじゃないか)?」と割って入った。

 

私の発言が火に油を注いだようだ。結構にぎやかなレストランで周りの客がこちらを振り向く

ほどワーワー話しをするハメになった。年をとってくるとお互い結構頑固になってくることの証

左かもしれない。

 

何でこういうことを書く気になったかと言うと、ちょうど野村総研のリチャード・クー

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%BC

が野村證券のウェブサイトに連載している「マンデー・ミーティング・メモ」の11月9日号に以

下のようなことを書いていたからだ。ちょっと長くなるが引用してみる:

 

 

今回私は、ワシントンでアーミテージ元国務副長官とも意見交換する機会があっ

たが、彼のこの問題 [日本の民主党政権が「アジア寄り」に外交政策の舵を切る

ことを表明したこと] に対する懸念は大変なものであった。

 

つまり私のほうからは、新政権の人々は「アジア寄り」と言っているが、日米関係

の重要性にも言及しており、現実にはわずかな(数インチ程度の)スタンス変更で

終わるのではないかと言ったところ、彼は今のような微妙な時期に、日本が数イ

ンチでも“逆"の方向に動いたときの悪影響を考えて見たことがあるのか!と大

声で言われてしまったのである。

 

 

ははあ、彼も大声でやられたんだ。アメリカ人と話をしていると、時々このような状況に遭遇

する。このときの対応方法は:

 

1.         不満だが黙りこむ(語学力に自信のない日本人がよくとる方法)

 

2.         先日の私のようにワーワーやる(それなりに語学力がないとこれは無理。ただし、

ひとつ対処法がある。「お前は対案を示さずノーとしかいえないのか?」とバカにさ

れるが、反対であったりいやなことについては「ノー」とか「反対だ」と言い続けるこ

とだ)

 

の二つしかない。ただし後者、つまりワーワーやるほうを選択する場合、その結果には責任

と持たねばならない。

 

更にクーの文章からの引用を続ける。

 

 

実際、今回の経済危機で米国が自信を失い、外交的にも内向きになる危険性は

高い。[中略] このような中で、日本までもが、たとえ数インチであっても中国寄り

に動き出せば、米国としても、これ以上アジアにコミットするのは得策ではないと

言う判断になりかねないのである。

 

[中略]

 

「アジア重視」と言う言葉の聞こえは良いが、日本の新政権がそこまで考えて「ア

ジア寄り」の話をしているかどうかは大変気になるところである。

 

 

アーミテージに怒鳴られたことにどう対処したのかは書いてない。

 

私の例では相手とは特段の利害関係もないので最悪友人でなくなるリスクさえ覚悟すれば

すむが、アーミテージの主張に対しては、黙りこまずに反論するなら「~の事情から悪影響

はない」とその根拠を示して主張するか、「確かに悪影響はあるが、それにはこのように対

処するので問題はない」とか「~のような好影響もあるので好悪を相殺すると総合的にはプ

ラスだ」とか言って切り返せないとだめだ。こちらの反論に対し相手が大声をあげ続ける場

合は、交渉テクニックとしては必要に応じて声高に、机をたたいてでも相手の発言をさえぎ

ることも必要だ。

 

クーの場合、上記の文章のような懸念があったので、2.と言う対応はしなかっただろうと想

像される。

 

蛇足になるが、私はクーの懸念はしかし誠にもっともだと思う。

 

アジア重視を打ち出した結果、アメリカが徐々にアジアから手をひきだせば、当然日本の軍

備強化を考えねばならない。ところが日本の軍備強化は特に中国を刺激し、日中間で高価

な軍拡競争を招く恐れがある。アメリカという緩衝材がいるほうが便利である可能性もある

のだ。「アジア重視」と言う掛け声とは別に、我々はアメリカ軍の駐留費用の一部を負担しな

がら彼らをこの地域に留まらせるという選択肢のほうが安くつくのか冷静に計算をしてみる

必要がある。

 

出発したばかりの日本の民主党政権にとって内外共に課題山積で、どこからどう手をつけ

てゆかねばならないのか頭が痛いところだろうが(その実当選後一年のオバマ政権も同じ

ような状況におかれている)、課題を整理し、順序付けをし、一歩一歩解決を図って行って

ほしいものである。

 

補足: ワシントンから来日した友人は坂東眞理子女史の知人なので坂東女史がが学長を

つとめる昭和女子大学で女性の地位向上に関する講演をした。講演の途中、前列に座る

女子大生何人かが居眠りをしていた由だ。通訳つきだったので「話が判らないので寝てい

た」という言い訳は通じない。まあ昭和女子大と例えばヒラリーが卒業したアメリカ東部の名

門女子大Wellesley Collegeを同一次元で比較するつもりはないが、こういう話を聞くと「日

本の前途はさてどうなるのだろうか」と暗澹たる気持ちになる。

 

 


水のなるほどクイズ2010